七ふくたいむず2025 10月
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25.10.31

DHA・EPA ~ 脳と体を守る"海のサプリメント"~
魚に多く含まれる「DHA(ドコサヘキサエン酸)」と「EPA(エイコサペンタエン酸)」という成分をご存じでしょうか。
どちらも青魚に多く含まれる"オメガ3脂肪酸"と呼ばれる良質な脂で、脳の働きや血管の健康を保つうえで非常に重要な栄養素です。◆ DHAとEPAはどんな働きをするのか
まず、DHAは主に「脳と神経」に多く存在しています。
私たちの脳の約60%は脂質でできていますが、その中でもDHAは神経細胞の膜を柔らかく保ち、情報伝達をスムーズにする働きを持ちます。
そのため、DHAが不足すると神経の働きが鈍くなり、記憶力や判断力、集中力が低下しやすくなります。
実際に、DHAを多く摂取している人ほど認知機能の維持に効果があるという研究が数多く報告されています。
また、DHAは脳だけでなく、網膜にも多く含まれており、視覚機能を支える役割もあります。一方、EPAは「血管」と「炎症」に関わる働きを担っています。
EPAは血液中の脂質バランスを整え、血栓(血のかたまり)をできにくくし、血液をサラサラにします。
また、体の中で炎症を抑える作用があり、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などの生活習慣病の予防にもつながります。
つまり、DHAは"脳を守る脂"、EPAは"血管を守る脂"といえるでしょう。◆ 認知機能と生活習慣病への影響
認知症の発症には、脳の血流や炎症、酸化ストレスなどさまざまな要因が関係しています。
DHAやEPAはこれらに直接的・間接的に作用し、脳の神経細胞を守る働きをします。
近年の研究では、DHAやEPAを定期的に摂っている人は、認知機能の低下速度が遅いという結果も報告されています。
また、うつ病やストレスとの関連も注目されており、オメガ3脂肪酸を多く摂ることで気分の安定や意欲の改善がみられることもあります。生活習慣病の面でも、EPAやDHAの摂取は重要です。
中性脂肪を下げる効果があることは医学的に確立されており、脂質異常症や糖尿病、高血圧といった疾患の進行を抑える可能性があります。
また、血管のしなやかさを保つことで心臓や腎臓への負担を軽くし、全身の循環を改善します。◆ どのくらい摂ればよいのか
日本人の食事摂取基準(2025年版)では、成人で 1日あたり1g以上(DHA+EPA) の摂取が望ましいとされています。
これは、サバやイワシなら1切れ(約100g)、サンマ1尾、ブリやマグロの刺身なら3~4切れほどに相当します。
つまり、「週に2~3回、青魚を食べる」ことを意識すれば、十分にDHA・EPAを補うことができます。◆ 摂取の工夫と注意点
魚を食べる機会が少ない方は、缶詰やレトルト製品を活用するのもおすすめです。
サバ缶やイワシ缶にはEPA・DHAが豊富に含まれており、汁ごと食べることで効率よく摂取できます。
また、刺身や焼き魚だけでなく、みそ煮や南蛮漬け、カレー、パスタなど、日常のメニューに無理なく取り入れる工夫をすると続けやすいでしょう。サプリメントから摂取する方法もありますが、過剰摂取に注意が必要です。
特に抗凝固薬(血をサラサラにする薬)を服用中の方は、出血しやすくなるおそれがあるため、医師に相談してから使用してください。
また、サプリメントよりも"食品から摂る"ことのほうが、他の栄養素(タンパク質やビタミンDなど)も一緒に取れるため、より自然で安全です。◆ 食習慣を変える第一歩
現代の日本人は、肉中心の食生活や外食の増加により、オメガ3脂肪酸の摂取量が減少しています。
一方で、オメガ6脂肪酸(サラダ油や揚げ物などに多い)を摂りすぎる傾向にあり、このバランスが崩れると体内で炎症が起こりやすくなります。
したがって、「肉より魚を意識的に」 が大切なポイントです。買い物のときに青魚を選ぶ、週末に魚料理をまとめて作り置きする、外食時も刺身定食や焼き魚定食を選ぶ――。
そんな小さな工夫の積み重ねが、脳と血管の健康を守る大きな一歩となります。◆ まとめ
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DHA:脳や神経、視覚を支える脂質。記憶力・集中力の維持に関与。
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EPA:血液をサラサラにし、炎症を抑える。動脈硬化や心疾患の予防に有効。
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目標摂取量:1日1g(青魚1切れ程度)。週2~3回の魚食を目指す。
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工夫:缶詰・惣菜を活用、油のバランスを見直す。
脳の健康も、血管の若さも、毎日の食卓から始まります。
今日の献立に「魚」を一品加えることが、将来の認知症や生活習慣病の予防につながります。
海の恵みをうまく取り入れて、脳も体も若々しく保ちましょう。 -



